エントランスホールから望む内浦湾と対岸の駒ケ岳
お子さんの急な発熱にアタフタしてしまうこと、ありますよね。特に、解熱剤のタイミングは難しいときがあったりします。今回は、その解熱剤を使うタイミングや目的についてご紹介します。
[監修者] 要藤 裕孝 小児科部長
大学院にて小児科の基礎を学んだ後、市立函館病院・道立江差病院・留萌市立病院と順に転勤いたしまして『沿岸警備隊』と呼ばれておりました。その後、アメリカのミズーリ大学コロンビア校へ3年間研究留学し、帰国後は札幌医科大学小児科に戻り、北海道の子ども医療の最先端の砦を守ってきました。 洞爺協会病院では、当地の子どもが安心して過ごすことができますよう、小児科診療を担っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 |
急な子どもの『発熱』に心配されるお父さん、お母さんは多いことと思います。子どもの『発熱』は、ほとんどがウイルス性の風邪が原因です。『発熱』は人間の免疫システムと関係しておりますので、逆に『発熱』しない人は風邪を治すことができずに重症化してしまいます。小児科の教科書には「無理に解熱させると、かえって感染症が長引いてしまう」と書かれております。とは言っても、高熱でぐったりした状態では十分に水分を摂れないこともありますので、現実的には38.5℃以上あって水分を摂る元気がなければ、解熱薬の使用をお勧めしております。解熱薬使用の目的は「熱を下げて病気を治す」ことではなく、「脱水を防いで全身状態を良くする」ことです。子どもはウイルス感染症を繰り返していく度に、抗体を獲得して、感染しにくい身体になっていきます。こどもの発熱の多くはウイルス性の風邪が原因ですが、まれにそれ以外の病気が原因となっていることがあります。それを的確に見分けるのが、小児科医の一番大切な仕事となります。
38.5℃以上の高熱→水分を摂る元気がない→解熱剤を使用
【解熱剤を使用する目的】脱水を防いで全身状態を良くする
大人に比べて、小児は体温が高いものです。予防接種は37.5℃以上で中止となり、37.4℃までなら接種可能となります。37.5℃以上が有意な『発熱』で、38.5℃以上が解熱薬使用の目安です。
他科の先生に「子どもって症状を上手く話せないから小児科医は大変ですね」とよく言われます。小児科医としては「大人は我慢強い人、繊細な人、大袈裟な人などがいて、子どもよりわかりにくいかも」と思うことがあります。子どもは足が痛ければ無理に動かしませんし、具合が悪ければ機嫌が悪く、調子良ければにこやかです。「子どもの方が正直でわかりやすいかも」と小児科医は思うのです。